見たのはもう結構前の映画なんですが、、、
ホームズ好きとしては見逃せないってことで
映画『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』見ました。
なんで書くのがゆっくりになったかというと・・・
ここから核心だって気にせずにネタバレします
映画を見た後で、
「サンショウ」という字幕が一部「サンショウウオ」だったような気がして、いや、勝手に「サンショウ」を「山椒魚」と思い込んだせいかもしれませんが、そんなこんなで
「結局山椒なんだよね?山椒魚じゃなくて・・・」なんて思って、
で、原作小説を本屋さんで手に取ったら・・・
前半でロジャーが死んでるーーー!!!
という衝撃事実がありまして、
これは原作も読まねば、読まねば・・・となりまして、
そんなわけでブログにはゆっくり登場となりました。
映画も小説も基本的には
年老いて、記憶力が怪しくなってしまったホームズ。
日本旅行から帰国。
日本ではウメザキという日本人男性と会い、老化防止にいい山椒をゲットする。
でもウメザキの本当の目的は、英国へ行ってホームズと会って以来帰っていない父のことを聞きたい。
ホームズはウメザキ父に会った記憶なし。
英国では住み込み家政婦を雇って暮らしている。
家政婦の息子・ロジャーに養蜂を教えている。
ワトソンもマイクロフトも亡くなっている。
昔の事件を思い出して、記録をしようとしている。
でも記憶がふわふわする。
とりあえず事件関係者の女性のことが忘れられない。
そしてロジャー、スズメバチに刺されまくる。
ここは同じように進みます。
映画鑑賞中はちょっと・・・しんどかったです。
なんていうか、、、
まず記憶力が低下して、人の名前すら覚えられないホームズを見ているのがツラい。
映画では、人の名前を間違えないようにカフスに名前を刻み、時々確認して呼びかけます。
それが、ウメザキだけじゃなく、ロジャーの名前も。
小説ではカフスに書いているくだりはありませんが、ロジャーの名前を一度思いっきり間違えて呼びかけます。ロジャーは華麗にスルーしてたけど。大人ね、ロジャー。
記憶があやふやだった時はノートに記録するようにと医者に言われてチェックしていくわけですが(チェックすることすら忘れたらどうしよう・・・とソワソワ)、そのチェックマークの数や大きなぐりぐりチェックにショック。これは、、、なんかもう泣けました。
ツラい。。。
それから、
あの健康に無頓着なホームズがロイヤルゼリーや山椒に執着しているのもなんかツラい。
自分の記憶力低下を自覚しているので必死なわけですが、でもなんかやっぱりツラい。
結局、脳みそが衰えているホームズを見るのが本当にツラい。。。
ところで、原爆投下後の広島をホームズとウメザキは旅するわけですが、
その焼け野原になんとか残っていた山椒って・・・なんか危なくないかしら??
そして、
ホームズの心に残る女性がアイリーンだけじゃなくなっているのがツラい。
ホームズの「あの人」はアイリーンだけでいいのに、
ケラー夫人の写真を手元に置いておきたいだの、手袋を持っていたいだの、もう!!なんだよそれ!!という気持ち。
アイリーンの写真が1枚あれば十分じゃないかっっ!!とプンスカ。
(小説だと、ケラー夫人は映画ほど賢くはなく、ホームズの正体になんて気が付いていません。賢くしたのは、せめてアイリーンに近づけようとしたのかなぁ・・・)
あぁ、ツラい。。。
さらに、
いや・・・美しいラストシーンとも言えるんだろうけどさ、、、
ホームズが亡くなった大切な人たちの数だけ石を丸く並べて、その中心でお祈りのような仕草をするという呪術的な、宗教的な、そんなシーンも・・・超現実主義者のホームズであってほしいのになんでやねーん・・・って感じでツラい。
小説の方では、別に最後にどうこうではなく、気に入った石を並べた場所を作っていて、精神的にきつい時にはそこに行って瞑想すると落ち着く・・・ということでしたが。
なんだろう、、、なんかやめてよーという気持ち。
ツラい。。。
あと、どうでもいいけど、いやどうでもよくないけど、
ディオゲネスクラブで普通に会談しているシーンはちょっとどうなのよ。
来客室ならお話ししてもいいけどね、
すぐ横に新聞を読んでいる紳士の姿が映っているのですよ。
これはダメ。
横に新聞を読んでいる人がいるってことは来客室じゃないし、じゃあ言葉を発してはダメでしょ。小説ではちゃんと来客室とあったけど、映画は残念ながら甘かったです。
そんなこんなで
なんかツラかった。。。
さらにもっとどうでもいいけど、
でもツラいことが重なるとこんなこともツラいってことで、
日本のシーンが「いや、もう絶対日本じゃないし!」でツラかった。
真田広之が出てるんだから、そこは真田さんががんばれよ!と言いたい。
だって!せっかく!
原作の日本の描写が「あれ?書いたの日本人じゃないよね?」って思うくらいきちんと描けているのに!!
(作者のミッチ・カリンって日本で暮らした経験があるって、wikiで見ました)
なのに、映画でこれではもったいないわ!
ウメザキの母、強烈に片言だし
なお、小説のウメザキは男性と同棲中
戦後日本で男性と同棲って大変そう。弟ってことにしてたけど。
なお、ウメザキさん・・・ホームズにもちょっとほのかにそんな感情抱いちゃってます。
父であり恋しい人的な。
そんな男も恋しちゃうイアン・マッケランのホームズはものすごく美しいし、
最初ヨボヨボの93歳ホームズが出てきたとき
「え?イアン・マッケランってもうこんなにヨボヨボだっけ??」
とドキッとするほどリアルで、
でもその後、若い頃の(と言っても60歳ですが)ホームズが出てきたら背中がシャキッとして、まだまだ鋭さがあって、本当に美しい紳士で・・・
イアン・マッケランは実際のところ76歳。
いやいや、この変化にはたまげました。
60歳も93歳もまあおじいさん世代だけどさ、でも30年も差があるんだものね。見事な演じ分けでした。
それから
ロジャーが蜂に刺されたあとの真相解明とかはやっぱりホームズだなと思うし、
(小説では「完全に死んでいるな・・・うむ、完全に死んでいる」という衝撃的なひとり言を放つホームズ)
ウメザキに嘘でも慰めになるお手紙を書いたあとのドヤ顔はかわいいし、
家政婦(ロジャーママ)に「家を譲るつもりだった」と、本当に前もって思っていたのかどうかはわからないけど引き止めるひと言を発する顔もかわいいけどさ。
で、
その後ロジャーママも養蜂やってる姿とか、ジーンと心が温まったけどさ。
でも、
なんかもう、とにかく脳みそが衰えてるホームズってのは本当に見ててツラかったです。
スズメバチに刺されまくったロジャーも一命を取り留め、
ロジャーママも養蜂を始め、
救える心は嘘をついてでも救ってみて満足感を得て、
過去の未解決事件もゆっくりながら思い返してひとつの結論めいたものを得たような気持ちになって、
そして亡くなった友人たちに対する気持ちも整理がついて、
なんていうかすごく心が温かくなるひとつのハッピーなエンディングを迎えたので、映画としては「よかったね」と言いたくなるのですが、、、
うーん・・・もやもや。
で、前半で衝撃展開があった小説ですが、
こちらはまあ、よかったねとは確かに言い難い部分があります。
やっぱりロジャーが亡くなってるし。。。
スズメバチに刺されまくったロジャーはさすがに助からず、
家政婦さんもこのままそこに残る気にはなれず、、、
一応気持ちが揺らぐようなシーンがあるので、その後のことは想像するしかないのですが。
年老いたホームズが、孤独を抱えつつも気持ちの整理はつけて
いろいろなことを静かに受け入れるような、
美しくもありどこか悲しいラストなのです。
そう考えると、映画がオリジナルで作ったハッピーエンドは良かったのかもしれない。
ああ、よかったねと終われるから。
それにしても、
やっぱりなんか・・・ツラいなぁ。。。